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競輪・その基本と実践
(平成15年12月現在)  講師:TOM

●はじめに●
 3競オートの中で、最も世間的イメージが悪いのが競輪ではないでしょうか。過去の騒擾事件(レース場でお客が暴動を起こすこと)の数々、そして現在でも客層的には良い意味でも悪い意味でも最もディープなものがあります。しかし、逆に考えれば、それだけオトコ(漢、と書きたい)をアツくさせる素敵な競技ということがいえるでしょう。故・阿佐田哲也氏も「ギャンブルの王様は競輪」と言い切ったとか。また、数字では割り切れない、人間関係によって形成される「ライン」というものによって競争が支配されるあたり、「競輪は社会の縮図」とも言われています。この「ライン」の存在が初心者には予想を難解にしているのも事実ですが、覚えてさえしまえばこれが予想の最重要ファクターであり、知れば知るほど深みにハマって…あ、いや、深みを増してゆきます。他の3競技は人間が馬やモーターを操るものですが、競輪だけは自らの脚力で戦う競技。ライン(並び)という「頭脳」と、脚力という「肉体」の両面から予想する、推理ゲームとしても超一級の競技、それが競輪なのです。それだけに、一日レース場にいて全レース予想をしていると、帰る頃には疲れ果ててしまうので、私の場合は心身ともに健康な日のみ、競輪場に行くことにしています(苦笑)。

>> 競輪競争のしくみ <<

 9人の選手が約2000メートル(ビッグレースの決勝など例外あり)の距離を競走します。バンク(競争路)の長さにより当然周回数は変わり、500メートルバンクなら4周、400メートルバンクなら5周、333メートルバンク(俗にサンサン)なら6周戦となります。何周戦であっても、残り1周半の時点で鐘(ジャン)が鳴ります。
 2kmの距離を最初から最後まで全力で走れる(もがける)人間がいれば全戦全勝で大金持ちになれるのですが、それは到底ムリ。なので、どの選手も「ここからならゴールまで全力で行ける」という所まではなるべく力を使いたくないという思惑があります。でもそれだとやはり若くて脚力のある選手が有利。そこで「ライン」が形成されるというわけです。道中、9選手が一本棒になってチンタラ走っているように見えますが、9人が全てバラバラなわけではなく、3人(ライン)・3人・3人とか、4人・2人・3人とかに別れて、それぞれが見えない糸でつながっているようなもので。勝負どころ(たいていジャン前後)に来ると9人一本棒の隊列が乱れ、各ラインごとに、まとまって前に出ようとしたり、一旦引いたりといった動きを始めます。その後、競争のスピードは徐々に上がり、残り半周(最終バック)ではトップスピードに。そうして最終周の最終コーナーに自らのラインが最初に入って行ければしめたもの。ここまでは一種の団体戦といえますが、ここからゴール線まで(最終直線)は、個人の戦い。ラインの中で一番前を走る「先行選手」を、2番手3番手を追走する「追い込み選手」が差せるか差せないか…競輪のスリルとスピードの全てがこの瞬間に集約されます。

>> 競輪のツボ・「ライン」 <<

それでは「ライン」を更に詳しく説明しましょう。
これを書いている平成15年12月1日に開催されている、三重県・松坂競輪場の開設記念(G3)の番組より。

【 10レース・準決勝 】
車番 選 手 所属 年齢 戦法 競争得点
1 松井 一良 青森 39 追込 106.48
2 松岡 彰洋 三重 33 先行 112.60
3 小川 圭二 徳島 32 追込 110.84
4 児玉慎一郎 香川 29 自在 104.15
5 岩見 潤 三重 30 追込 105.40
6 松江 健一 静岡 31 追込 103.46
7 鰐淵 正利 愛知 33 追込 104.87
8 浜口 健二 高知 36 追込 104.55
9 海老根恵太 千葉 26 先行 105.90

この9選手によるレース。実際のライン構成(並び)は、こうなりました。

← 257  438  961

3人×3ラインという、いわゆる「キレイな3分戦」。このレースの場合は最も一般的である「地域ライン」の原則にのっとっています。すなわち、同じ地域の選手達が固まってラインを形成するわけ。この「地域」とは、全国47都道府県を以下のように分けたものです。

ライン
北日本ライン 北海道、東北6県
関東ライン 東京、埼玉、茨城、栃木、群馬、栃木、新潟、(長野)、(山梨)
南関東(南関・なんかん)ライン 千葉、神奈川、静岡
中部ライン 愛知、岐阜、三重、富山、石川、(福井)(長野)(山梨)
近畿ライン 大阪、京都、奈良、兵庫、和歌山、(福井)
中四国ライン 岡山、広島、山口、鳥取、島根、香川、徳島、高知、愛媛
九州ライン 九州7県、沖縄

これとて絶対的なものではなく、おおむねこのような感じ。つまり、上記のレースは「A松岡が引っ張る中部ラインvs児玉が引っ張る四国ラインvs海老根が引っ張る南関・北日本ライン」という図式になるわけです。

ここまでが理解できたら、次はライン内の構成(順番)について。まずはなぜ先行選手が一番前なのか? 早い話がラインとは、先行選手を風よけにして走る追い込み選手が他のラインを牽制しながら先行選手を守る、という大原則のもとに運営されているということ。自転車に乗ったことのある方なら少しは実感あるかもしれませんが、風の強い日に自転車に乗ると、その風の抵抗でかなり脚力を消耗します。それが、前を走る人の後ろにぴったりくっついて走ると、今までの疲れがウソのように脚が軽くなると。それだけ、自転車にとって風の抵抗というのは大きなものなのです。ならば、地域でまとまって勝つためには、一番脚力のある(主に若い)選手が風を切って先行し、脚力は劣るが競争テクニックのある(主にベテラン)選手が後ろを回って他ラインとの争いを引き受けるという役割分担をすればいいのではないか。それがラインの根本的な発想です。誰が最初に考えたのかは知りませんが、もの凄い人間の知恵の結晶ですよねぇ。私など、この仕組みにはいまだに感心・感動いたします。

先行-追込の2人ラインなら問題ないのですが、ラインが3人以上になった場合、2番手(「番手」といいます)以降の順番はどうやって決めるのか。当然、4番手より3番手、3番手より2番手の方が最後は有利。追込選手は誰もが番手を回りたいと思っています。この場合、優先されるのは 同県>同地域>他地域 の順。更に、同県が二人以上いる場合には、競争得点が上の方が番手を回ると決めたり、時には先行選手と個人的にも仲の良い選手の方が番手を主張したりとさまざま。上記レースの場合で言えば…

中部ライン…2と同県の5が番手で順当
四国ライン…全員四国の別々の県の選手ではあるが、38の競争得点を比べれば3が断然格上
南関・北日本ライン…96は南関ライン。1は北日本の選手なので3番手へ

という感じで、並び順が形成されてゆきます。例えば1などは別ラインの3番手に甘んじるより一人で(単騎で)戦ったほうが良さそうな気もしますが、やはりラインの中に入ったほうが有利な競輪競争。自力で勝負できる先行タイプならまだしも、おトシを召された追い込み型ということで、ここは9に引っ張ってもらいながら3番手でじっくり脚を貯めて(番手より3番手の方が、他ラインとの争いが少ない分、脚力を消耗しない)最後にスキあらば…という考えになるのでしょう。加えて他ラインだと4番手になってしまうというのと、現在のところ南関と北日本は仲が良いということもあって自然とこの位置になります。

地域ラインの他に、競輪学校の同期ライン、地域を越えた練習仲間ラインなどもありますが、全競争のうちほぼ9割以上は地域によってライン形成がされます。

一人の競輪選手が、若いうちは地域の先輩のために身を粉にして先行し(決して犠牲になる、ということではないのですが)、自分がトシを取ったら、若い衆を守りながら世話になる…そんな図式が「競輪は社会の縮図」と言われる部分です。中には若いうちから自分が勝つための競争ばかりして周囲から嫌われ者になり、誰も協力してくれない寂しい老後を送る選手も…。あぁぁ、まさに世間そのものですね。そんな選手とラインの姿に、観戦するファンそれぞれが思い入れを加えてゆくのです。

>> 実際の予想 <<

 ラインの原則を踏まえた上で、予想に入りましょう。

【10レース・準決勝】
車番 選 手 所属 年齢 戦法 競争得点 BS
1 松井 一良 青森 39 追込 106.48 0 0 4 3 0
2 松岡 彰洋 三重 33 先行 112.60 16 5 4 0 21
3 小川 圭二 徳島 32 追込 110.84 0 1 10 1 0
4 児玉慎一郎 香川 29 自在 104.15 2 7 0 0 4
5 岩見 潤 三重 30 追込 105.40 0 2 7 3 0
6 松江 健一 静岡 31 追込 103.46 0 0 3 1 0
7 鰐淵 正利 愛知 33 追込 104.87 0 0 4 4 0
8 浜口 健二 高知 36 追込 104.55 0 1 4 2 0
9 海老根恵太 千葉 26 先行 105.90 7 5 0 0 16

(並び)← 257  438  961

まずは、どのラインの先行選手が一番強いか・最終バックをトップで風を切っているかを考えます。その選手とそのラインの選手が連に絡む(2着までに入る)可能性が高いからです。脚力や競争得点も重要な目安にはなりますが、最も着目すべきはその先行選手が「先行タイプ」か「捲りタイプ」かということ。「先行タイプ」とは、ジャン前後から前に出て、率先してトップを取り、そのまま先行してゆくタイプ。「捲りタイプ」は先行した他ラインを外から捲って追い抜こうとするタイプ。一般的に、踏み出してから長くもがける脚質の選手が先行、もがける距離は短いが、トップスピードに乗せるのが早く、スピード自体も速い選手が捲りに回る傾向があります。そのタイプを判断する材料となるのは、上記の「決まり手」欄(予想紙には必ず載っています)。「決まり手」とは、その選手が最近2着までに入った時の勝ち方のデータ。「逃」は、先行してそのまま逃げ切った形。「捲」は後ろから捲りきって勝った形、「差」は、勝ちきった(出切った)先行選手の2〜3番手あたりからゴール前で差しきった形、「マ」は「マーク」の略で、前の選手の後ろで抜かずに(抜けずに)そのまま追走2着、の形。「BS」は、最終バックを先頭で通過した回数(新聞によっては「先頭数」と表示)、となります。

このレースでは、2松岡の先行数がダントツ。次いで若い海老根。4児玉は自力型ではあるものの、先行は少なく、捲りに回る可能性が高い。してみると、一番可能性の高いレース展開は「一旦前に出た海老根をジャン前後で松岡がおさえて先行、後半に児玉が捲り発進」と考えられるわけです。が、一番強い先行である松岡を逃がしたら格下の児玉では届かない可能性が高く、児玉としてはすんなり逃がしたくはない。海老根とて同様で、なんとか松岡が発進する前に自分が駆けてしまいたい、と思っているはず。このあたりでは、自分がそれぞれの選手の立場になったつもりで予想を働かせましょう。

オッズ的には松岡=岩見の地元ラインワンツーが一番人気になるでしょう。車番2連勝複式(2連複)でいえば25、単式(2車単)では格上の松岡が後ろの岩見に差させず逃げ切る2-5が本命になると思われます。そこに、前述のような他ラインの選手の思惑が絡み、どのような展開になってゆくか。奥の奥まで考え、予想を絞ってゆきます。

私がこのレースでした予想は以下の通り(全て2車単)。
・やはり松岡には逆らえないが、早めに逃げれば岩見の差しもあるかも 2=5
・児玉の捲りに追走した3.小川が格上の力で強襲する 2=3 3=5
・海老根が松岡を置いて一気に逃げた場合の 9-6 9=1
・海老根が早めの先行で最後はタレて、最後に松岡の突っ込み 2=6 1=2

実際このように13点も買うことはあまりありませんが(取ってもあまり儲からない、ヘタすりゃガミなので)、自分的にはこれだけの可能性があるな、と思うわけです。この買い目をご覧になり、こと南関ラインに関しては、なぜ番手の6よりも3番手の1のほうに肩入れするのかと疑問に思われる向きもあるでしょうが、6松江は南関ラインということで9の番手を回っているものの、力的には3番手の1が上位(競争得点的にも、また、自分の過去の観戦歴から考えても)。前述の「脚を貯めて」というやつで、最終直線では16をしのぐだろうと考えた次第です。競輪の普遍的な番組構成として「ヨーロッパ(4・6・8番車)には格下の選手を配置する。中でも6番はそのレースで一番弱い選手」というのがあり、そのあたりも微妙に作用しています。まぁ、どちらにしても、この並びで1が絡めばかなりの配当になるので、可能性アリ! と思えば1から少額づつ、更に手広く買っても儲けはあるでしょう。来れば、の話ですが(苦笑)。

さて、このレースの結果は以下のようになりました。
1着・2番
2着・8番
3着・3番

2車単 2-8 7130円(71.3倍)
3車単 2-8-3 44060円(440.6倍)

(レース展開)


・周回 ← 438  257  961

・打鐘(ジャン) ← 961  257  438

              8
最終ホーム(残り一周) 9 6 1   2 5 7
        4 3    



・BS(残り半周) 2 8     3   7 5
  9 6 1   4    



・終直線 2 8 3     5   6
9   4 1 7      

ちょっとわかりづらいですか? そうですか。でも、なんとか頑張って千切れずついてきてください。あとちょっとです。

結果的には本命の松岡が1着だったにもかかわらず高配当になりました。8浜口が最終ホームで四国ラインから離れ(意図的に離れたのか、はたまた単に千切れてしまったのか、は定かでありません)、ほぼ同時に踏み出した2松岡の後ろにハマってしまった(5.岩見が2から離れてしまった)ために、このような展開になったワケです。で、これまた3着には3小川が格上の脚力なりに最後には突っ込んできた、という感じだと思います。後悔&結果論としては、この2-8を「買える発想」は、とにかく2.松岡に絶対的な信頼を寄せ(「展開はどうなろうと、最後は松岡だろう」と考え)、2の1着から、2着は誰だろうと考える。その際に、たとえ人気薄であろうとも、8浜口の決まり手「捲:1」に注目し、ラインから離れたとしても、一応自力の競争もできる脚力があることはあるので、展開次第では2着はあるかも…と考えなければこんな車券は買えませんや。…くそっ。

とまぁ、勝手なゴタクを並べましたが、目の前のレースをラインの原則をもとにキチンと考えれば、必ず当たる時はあります。まだまだ説明しきれていないファジーな部分が山ほどあるのが競輪競争であり、スポーツ新聞・予想紙からCSの予想番組に至るまで、全ての専門記者・評論家の予想も、それぞれ各自の色々な(勝手な)思い入れ・思いこみから出てきています。逆に言えば、「こうすれば当たる!」という情報などは全てウソだとも言えるのです。当欄では、とりあえず「一人で競輪場に行っても予想紙を見ながら自分なりの予想ができる」という観点でまとめてみました。あとはご自身で学習・経験を重ね、当たる回数が少しづつでも増えるように頑張りましょう。私も頑張ります。ご静聴ありがとうございました。

>> おわりに <<

 初心者の方々向けに3競オートそれぞれの原理原則を記す当欄ですが、たぶん当「競輪編」が一番長くなっていると思われます。しかし、それだけ奥が深く、かつ面白いのが競輪であると確信して書かせていただきました。私自身、やはり競輪が一番好きですし、自分の持つ文章力の全てを投入して記したつもりではありますが、この文字数では到底書ききれない部分・要素も多々あります。お読みになって更なる疑問などありましたら、遠慮なくメール tom@sanseiha.net までお尋ねください。

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