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#004 「花の港区・帝都競輪地獄 〜ラ・ピスタ新橋編〜 」 (2004.6.1)

  「専用場外」というものがある。読んで字のごとく、レース場の外ということだが、外といっても京王閣競輪場正門の真ん前にある立ち飲み屋とか、ましてや川崎競輪場周辺でレース終了後に突然発生するデ○スケ賭博場などのことでは決してなく、「レース場以外で車券や舟券や馬券を買える場所」ということである。最近は年間10箇所近くのペースで全国に新設されており、地方へのバクチ普及に大きな役割を果たしているのだが、やはりというか、設置の計画が持ち上がるたびに地元議会やら近隣住民やらによる反対運動が持ち上がり、計画断念する所も多いと聞く。いいじゃんか〜、ゲーセン(大人向きの)作るようなもんなんだからさ。

 
そんな世間の風当たり強い我が国・場外界にあって、燦然と輝く存在なのが競輪の専用場外 「ラ・ピスタ新橋」。全国他場外が、比較的イナカというか、郊外のインターチェンジのすぐそばとかハタケのド真中にあるのに対し、ここはあの東京都港区新橋駅前! 現在のトレンディスポット (笑)・汐留も目と鼻の先! 地価高っ! というような場所に自社ビル(とは言わないか)をブッ建て、日々車券を売りまくっているという、バクチ好きにとっては夢のような場所。

  日曜日のご家庭では「お父さん、どこ行くの?」「ん?あ、あぁ、ちょっと花月園に」「また競輪?いいかげんにしてよね、あんな汚いトコ。どーせ負けてくるんでしょ!」というような会話が多々交わされていることは想像に難くないが、これがラ・ピスタだと「どこ行くの?」「ん、ちょっと新橋にな」 「あ、あのオシャレな競輪ビル?いいなぁ、私も行きたいぃ」「じゃ、子供達も連れて一緒に行くか」 「嬉しいっ!じゃお父さん、勝ってその後、汐留のレストランでお食事にしましょうよ、うふ」 …などと、いきなり円満な家庭が演出されそうではある。そんな時に限ってボロ負けして食事はおろか、家族4人分の帰りの電車賃さえ危うかったりするんだけどね(笑)。とりあえず家を出てしまえばこっちのもの。うまくやりましょー。

 そーゆー円満な家庭形成を人生の目標とする私ととっきぃは、3月上旬のある日曜日、ラ・ピスタに入会すべく新橋へと向かった。そう、ここは完全会員制。登録したメンバーしか入場は許されないのである。あ、そうすると「じゃ、子供達も連れて一緒に…」なんてのはムリか。やっぱり賭場はオトナの世界っと。

 入会には入会金(2000円)と写真と入会書類への記入が必要。さて、写真はどうしたものかと受付嬢に尋ねると、どうやら隣のDPEショップと話がデキているらしく、すかさずスピード写真の割引券を渡される。これも「競輪の社会貢献」の一つと言えなくもない。店で渡された写真を持ち、再度受付へ。ここで書類に記入をし、入会金を払うと、会員証は後日のお渡しになるとのことだが、本日分の入場証は渡される。「このまま打って行ってくださいな」というイキなはからい…というか、「今日はまだ入れません」なんて言われた日にゃその場で暴れるけどね(笑)。目の前で開帳されているのに帰れるわきゃないでしょう。

 そうしてつつがなく入場。ここラ・ピスタの一般席は7Fまで。2Fが入り口、3・4Fが禁煙フロア、5〜7Fが喫煙スペース「もある」フロアだ。比較的空いている6Fまで上ると、そこは想像していたよりも明るくキレイで、それでいて濃い空間。発券機とモニターが所狭しと並ぶ。本日は伊東記念2日目が開催中で、我々も当然それを打ちに来たのだが、ここでは同時に花月園ヒラの発売もしているようで、数あるモニターは伊東と花月園が半々。

とむ「おお〜、両方いっぺんに打てるぞー」
とっきぃ「うわー、こりゃだめだ」
とむ「え、こういうのはお嫌い?」
とっきぃ「いや、やってるやつ全部打っちゃいそう!」
とむ「…好きにしてくれ」

 ところで、ふと周囲を見回すと、伊東記念(ビッグレース)よりも、花月園F2(どヒラ)を打ってるオジサマの方が多いような気が。両場の各レース発走時刻には若干のズレがあって、今日の場合、おおむね花月園の各レース発走の7〜8分後が伊東の発走、というタイムスケジュールになっている。それぞれの発走のたびにモニター前に人が集まり盛り上がるのだが、人数・歓声ともに花月園ヒラの方が盛んなのだ。うーむ、コアな競輪客は今でもビッグよりヒラ(ラインで決まることが多く、取りやすい)を好むと聞くが。こんなところにも現れるラ・ピスタのなにげに、いや、やはり濃い客層。

 さすがにそんなベテラン客に比べてまだまだ若輩な我々は、伊東記念を中心に打ち続け、取ったり取られたりした挙句に結局共にマイナス。最終レース終了後、いったんラ・ピスタをあとにして、近所の安飲み屋に突入したのであった。

とむ「いや〜、素晴らしい場所だね! 都心のオアシスだよ(笑)」
とっきぃ「あの状況じゃ打ちまくっちやうよ。まさに魔の場外…
とむ「この上、この後は小倉のナイターも売るらしいよ」
とっきぃ「え、マジで!?」

…しばし飲み…

とっきぃ「あ、悪い。ちょっと出てくるわ」
とむ「え、なに? 電話?」

…しばし経ち…

とむ「あ、お帰り。どこ行ってたの? ずいぶん長いじゃん」
とっきぃ「スミマセン。銀行行ってました

 かくして、酔った二人は出戻りforラ・ピスタ(笑)。
小倉の最終・決勝レースは、ウワサのスーパールーキー・武田豊樹(茨城・逃)が、酔って本命しかも2連単しか買えない我々の予想を大いに裏切り、オケラの上塗りをさせていただいたのであった。

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 それから数日。仕事が一段落したので、すでに熱戦が展開されている日本選手権競輪(静岡)の4日目を打ちに早朝からひとり新橋へ。

 なぜ早朝からかと言うと、特別観覧席への入場(一般会員は特観席の事前予約ができない)を狙ってのことだったのだが、現地に着いてみると「本日は一般会員様の指定席への入場はできません」とのこと。ちぇっ、早起きして来たのに…と、仕方なく早朝前売りを行っている3Fフロアへ。朝の前売りタイムはのどかなもので、客はまばら。無料のコーヒー&紅茶マシンが置かれ、椅子席周辺には普段はない長テーブルまで置かれている。 座る場所を物色していると、目の前になにやら変わったオジサマが。いや、見た目は普通なのだが。トシのころ50代前半くらい、白髪に銀縁メガネで、コーデュロイのジャケット。まぁ競輪客としては上等の方だ。このお方、目の前に「ながし/ボックス専用投票カード」を山積みにし、一枚一枚せっせと塗っている。ちらと覗き見ると、「静岡・3連単・2百円」を塗ったカードを大量に作っているようだ。ははぁ、「3連単ボックスマニア」だな。最近多いよね、この手の人。 脇には知り合いとおぼしき同年代のオジサマが。こちらは短髪にジャンバーという競輪客標準ルックスで、マークカードには目もくれず、新聞を熟読しつつ予想中。

 塗るのに飽きてきたのか、白髪のオジサマが手を動かしながら短髪のオジサマに話しかける。

白髪「こうやって一生懸命塗っててよぉ。たまにデカイのが引っかかって取っても、まーた競馬でヤラレちゃうんだからな」
短髪「ははは、そうか」
白髪「俺んち浅草だろ。すぐ近くに場外あるからさ。日曜なんか家でTVの競馬中継見てて、解説者が『この馬は良さそうですよ』とか言ってんの聞くと、買いたくなってそのまま行ってさ。また間に合っちゃうんだよ、近いから」
短髪「うんうん」
白髪「で、まったく来やしねぇんだ、そういうのが。解説者の言うことなんか当たんねぇ。あと、ほかにも色々出るだろ、馬体重とか。本命馬がプラス20キロ、なんて聞くと、それ外して穴狙えー、って買うんだけど、ダメだな。当たったためしがないよ」
短髪「うーん、馬は難しいよなぁ。…競艇はやんないの?」
白髪遠いだろ、競艇場は。だからやんねぇ」

  うーむ、バクチ好きは開帳さえしていればどこにでも行くと思っていたのだが、そうでもないようだ。この方の場合どうやら「一番近くで打てるところが好き」という、かなりモノグサなタイプ。こういう人も多いので、やはり大都市の中心部に場外がなくてはならぬ。この方がお住まいの浅草には競艇場外「ボートピア」、そして池袋東口の競輪・オートレースの複合場外と、都心にも場外設置の計画はあるのだが、お決まりの地元住民と区議会による反対運動とやらがあって頓挫しまくり。なんでも「ギャンブル場ができると街の風紀が乱れる」んだそうだ。子供の教育上もよろしくない、と。今の時代にまた、時代錯誤な偏見だよなぁ。ま、場外ができれば風紀が良くなりますよとは言わんけどさ(笑)。少なくとも風俗店やパチンコ屋に比べて悪いとは思わないのだが。

  その後、白髪オジサマの話はますます興に乗り、なにやら怪しげな方法へと…。

「この前、西武園で3連単の90万っての出ただろ。あれ、俺200円取ったんだ」
「ふーん、すごいねぇ」
とむ:あれ?あんまり驚かないな。マユツバと思ってるのかな)
「もっと驚けよぉ。180万だよ、180ま・ん」
「そうやってずっと買ってりゃたまにはあるだろうな」
とむ:ふむ。この短髪オジサマの方が肝がすわっているな)
「それでさ、払い戻して、何しろ180万持ってんだろ。こりゃ浅草までタクシーで帰ろうと思ってさ」 (とむ:西武園から浅草までタク? 2万円以上かな)
「で、車乗ったら、運転手が若いおねーちゃんでさ。見た目28か9ぐらいのちょっといい女で」
「へえぇ、珍しいね。最近は女の運ちゃんも結構いるけどな」
「で、帰る道々話しててさ。『なんで若いのにタクシーなんかやってんの?』って聞いたら、元々旦那がタクシー運転手で、西武園に入れ込んじゃって、借金して蒸発しちゃったんだってさ。それで勤めてたタクシー会社に荷物とか取りに行ったら、その場で社長に口説かれて、二種免許取って運転手になったんだと。『お客さんも競輪好きなんですか?』って聞くから、『うん、今日は200万近く勝ってさ』って答えたら、『まぁ!お強いんですね〜』なんて、なんかヘンな雰囲気になってきて」

  んん? 早くもイイ下ネタの予感にワクワクして聞き入る私。直接の話し相手である短髪オジサマは自分も予想紙見ながら淡々と聞いているが。

「こりゃ誘えばどうにかなるかな?と思って『ホテル行こうよ』って行ったら、ちょっと考えてたけど、『もう旦那もいないし…』みたいなこと言うからさ。『なんならその間メーター回しっぱなしでもいいから』ってダメ押ししたらオッケーよ。そのまま新宿の手前でモーテル入って」
とむ:モーテル!!死語ですな)

  …その後、10数分以上に渡って語られた詳しい描写はあまりにもお下劣なので割愛させていただきますが、ともかくそんな話を、まだ人もまばらな(声のガンガン響く)早朝のフロアで大声でしゃべり続けるオジサマ。素晴らしすぎるぞラ・ピスタ。この状況、そして人間模様。今後も時間があれば足繁く来よう、とすっかりハマってしまった私であった。ハマったものの、その日はさすがにオジサマの毒気にヤラれてあまり打つ気もなくなってしまい(苦笑)、予定より早々に新橋を後にしてしまったのであるが。

  いや〜それにしても、前述のようにパッと見は結構こぎれいなオジサマなんだけどなぁ。上から順に見ると銀縁メガネに上等なコーデュロイのジャケット、それに揃いのスラックス。でも、最後に足元を見ると…裸足に便所サンダルでした(笑)。

【ラ・ピスタ新橋・要点】
交通アクセス:JR新橋駅より徒歩15秒。ダッシュで5秒。
開催:グレードレースを中心に関東・南関のF2戦まで。ナイター開催時は夜もそのまま継続。
場内:一般席は3〜7Fの5フロア。タテ長の鉛筆型ビルゆえ各フロアは狭いが内装はキレイ。
私見・感想:開場してから数年。なぜ今まで入会しなかったのかと後悔しきり。自宅から地下鉄で20分弱でたどりつけるとゆーのに…。入会以来、月に5〜6度は足を運んでいます。
飲み食い:食堂はナシ。入場してすぐの売店でジュース類を販売のほか、各フロアに自販機アリで、ウーロン茶・緑茶(アイス・ホット)は無料。5月中旬まではナイター時のみジュース類も無料だったのだが、現在は有料。なぜだ!? 食事はできないが、なにせ新橋駅前。一歩外に出れば飲み屋から立ち食いそば屋、回転寿司、各種ファーストフードまでよりどりみどり。私的には朝イチから参戦したとすれば、5Rあたりでいったん退場して付近の回転寿司でビール&昼食、帰りにマックでポテトをオヤツに購入して8Rくらいから復帰。最終まで打った後、今度は付近の居酒屋へ。1時間半くらい呑んだ後、また戻ればナイターの9Rあたり…なんてのがベストかな。

 

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