公営レースG7(ギャンブル・セブン)
〜「公営競技はどこへ行く」Bank of Dream氏と賛成派TOMの定例会談〜
■前年比売上減、という点では公営競技中ダントツの数字となる地方競馬。一方、同じく下降線とはいえ、いぜん我が世の春を謳歌し続ける中央競馬。それぞれに問題を抱えながら、さて「ニッポン競馬」の行方は? そして我々が提案する競馬普及策は?
★☆VOL.004 『公営競技普及策・競馬編』★☆
「地方競馬はよく当たる!?」
Bank of Dream (以下B):今回はキングオブスポーツですね。
TOM(以下T):はい。今回のテーマは「公営競技普及策・競馬編」ということで。もちろん落ち込みが悲惨なのは中央ではなく地方の方ですが。ちなみに最近見た某業界紙のデータによれば、公営5競技の中で、最も前年比売上が落ちたのが地方競馬。しかもダントツです。
B:もう終わりでしょう。地方競馬。
T:またこれだ(笑)。そう言ってしまってはこの対談の意味もないので、ポジティブに普及策を考えていきましょう。BODさんもよく笠松・園田などに行かれているようですが、地方競馬の魅力とは?
B:地方競馬のほうが買いやすいですね。
T:先日、地方競馬系ブログの方と話をして意気投合したのはまさにその点でしたね。クラス分けが細かくされていて、いつも同じ馬同士が走っているのが一方では「欠点」でもあるのだが、馬券としては「取りやすい」ですよね。学習がしやすいというか。
B:まず展開が地方競馬だとほとんど読めてしまいますね。騎手の型にもよるところが大きいし。中央競馬は展開が読めない上に頭数も多いから、条件戦あたりだと当たる気がしないですね。但し、大井競馬やホッカイドウ競馬は相当に難しいです。
T:私は中央はいつも書いている通り完全に「騎手買い」です。公営競技ライターとして恥ずかしいです(笑)。その点、地方だとまだ馬をちゃんと見ますね。で、大井やホッカイドウの難しさとは?
B:頭数が多いし、展開がバラけやすいからですね。とりわけ、ホッカイドウの場合は軸がしっかりしていないメンバー構成が多いからです。
T:なるほど。でも、宣伝のキャッチとして「当たりやすい」というのはデカイと思いますね。あと、その方と話していた中では「競馬場も馬も身近な感じがする」というのがありました。
B:確かに地方競馬は至近感があります。大井競馬場でさえパドックが小さいし。他のところだと馬がこっちに迫ってくるような迫力感がありますね。
T:中央しか知らなかった友人を、それこそ川崎などに連れていくと、あまりに目の前を馬が走っていて絶句します(笑)。そのあたりも宣伝材料にはなりますわね。あと、ばんえい競馬などでは、より馬を身近に感じてもらうため、街や学校などに馬を連れ出してのイベントも盛んです。
B:海外の競馬場もかなり至近感のあるところが多く、むしろ地方競馬場のほうが世界的な競馬場のスタイルに近い気がしますね。
T:なるほど。それは心強いご意見。中央だと、それこそスポーツ新聞の情報だけで、近所の場外で馬券買って、中継はTVで…みたいな感じじゃないですか。地方は「ちゃんと競馬場に行って、間近でちゃんと馬を見て、買う」というスタイルをウリにするのがいいのではないかと。
「競馬の原点的企画で盛り上げよう」
B:そして思うに、日本の競馬の原点は地方競馬であって、中央ではありません。
T:私が感じるに、今の中央競馬のあり方は、良い意味でも悪い意味でも「一般レジャー」的すぎますね。ギャンブルスポーツとしての面白味は薄いし、私が勝手にレース場の魅力と位置づける「大人のスリルある濃密な空間」という感じはしない。なにか「囲われた中で」遊ばされてるような気がするんですよね。まぁ、だからこそギャンブルが苦手な大衆からも支持を得たのでしょうが。
B:日本の競馬の歴史の流れからいって、中央競馬というのは外国人居留地競馬に対抗して作られた作為的なものであり、世界的にみてもかなり特殊な組織です。ところが、日本で「競馬」というと世界的に見れば中央競馬だとそのまま指されるわけです。
T:歴史の中で存在が捻じ曲がってしまったのは仕方ないとして、競馬ってそもそも地場産業みたいなもので、地元の馬持ちが自慢の馬を持ち寄って競走させたようなものでしょう? で、客は「んじゃ、オメェんとこの馬に賭けっぺぇ」みたいな感じで。
B:それが崩壊してしまったために、地方競馬の衰退が始まったともいえます。
T:そういう「競馬の原点」的な企画を考えると面白いかもしれませんね。今日の新聞あたりでは中央に巣食う成金馬主たちが0歳、しかも牝馬に6億とかの値をつけてるらしいですが、ならば地方は一般ファンに向けてのリーズナブルな共同馬主制度をもっと普及させるとか。ばん馬(ばんえい競馬の馬)なんか、1頭100万以下で買えて、厩舎への預託料も月15万くらいらしいですよ。俺でも馬主に…と思いました。
B:笠松ではすでにそうしたことをやってますね。本当の馬主がタダで馬を提供して1ヶ月2万円ぐらい出せば馬主になれるといったものを。
T:例えば、馬主になった一般客が「俺の馬、見に行って買ってくれよ」と、一人あたり20〜30人ぐらいを誘えば、それだけで客の裾野はかなり広がります。
B:馬主というのは、人間であれば一回は経験したいものですからねぇ。
T:その誘った30人の中から、また新たな馬主志望者も出てくるでしょうし。素晴らしい普及策だ。あとは、馬産地事情がそれに適応できるかどうか。
「中央競馬偏重に物申す」
B:ところで今、中央競馬は年間300日も開催がないのに、在厩馬は3000頭近くもいます。明らかに多すぎます。よって毎週のように除外馬が続出するし、結果、条件戦あたりだと質の低いレースに終始してますね。結局地方競馬がどんどんなくなっていっているから転籍させようにもさせられず、仕方なく馬を置いているケースがほとんどです。地方競馬の衰退は実は中央競馬にとってみても相当に深刻な事態と受け止めなければならないはずですが。
T:私は馬産地の細かい現況についてはちょっと不勉強なのですが、「馬が余っている」という状態は把握しています。ならば、中央も協力体制を取って、地方との馬のやりとり…さっきの話のように一般馬主向けの裾野を広げるとかを考えるべきかと。あとは、地方競馬の存続にJRAが直接的協力をするべきなんですがね。
B:でも、JRAは共同化馬主には反対の意向を示してますね。
T:馬産地サイドからJRAに圧力をかけてもいいぐらいなんですがねぇ。「これ以上日本競馬全体が右肩下がりになるような考えしか持てないなら、もうオマエんとこにも馬は出さんぞ」とね。
B:それが「できない」ところに問題がありますね。というのは、生産者もまた、JRAから多額のカネを受け取っているからです。
T:JRAの共同化反対の理屈とはどういうものなんでしょう?
B:馬主の財務内容が把握できない、という理由からでしょう。
T:結局「ウラのカネ」ですか…。我々は「いかにしてお客・売上を増やすか」ということを考えたいのに…がっかりですね。カネの問題に別のカネの問題が絡んでくるとどうしようもないです。
B:この間、JRAが特定ファミリー企業への随意契約が95%ぐらいに達しているというニュースがありましたが、JRAほど閉鎖的な体質の組織はないですよ。よって地方競馬との融合も全く今の時点では考えていないでしょう。
T:結局、中でカネを回しているわけでしょう? まぁ、それはいいとして、JRA自身だって売上は落ちているのに、まだ地方との一致協力をしようとしないところに怒り…というか、「馬鹿じゃないの?」という感じがしますね。
B:地方競馬全国協会(NAR)の存在にも問題がありますね。あそこは「何もしない組織」ですから。
T:確かに、地方サイドからそういったことを訴える動きはほとんど耳にしませんね。あとはマスコミも悪い。どうしてこれほどまでに中央競馬ばかり偏重するのか。「もう中央だって右肩下がりですよ〜、今のうちにちょっと距離置いて、他競技もバランス良く扱ったほうが健全なレースメディアたり得ますよ」と言いたい。
B:地方競馬を知るマスコミがいないですからねぇ。
T:新聞でいえば、レース部記者自体がすでに中央偏重の中で育ってる世代ですからね。昭和53年までは中央競馬より競輪の売上が上だった、ということすら知りませんから。まぁ、その辺の話はいずれ「G7・マスコミに物申す編」をやりたいと思ってるのでそれまでとっておきますが。
B:あと、中央はカネでマスコミをかなり抑えてますからねぇ。
T:私がよく書く「広告規制」の問題もありますしね。競輪や競艇だと認められない「ギャンブル的」CM表現が、大金主・JRAならオッケーなんですと。
B:ただ、JRAの商売手法も昔とほとんど変わってませんね。相も変わらずギャラがバカ高いタレントを起用してゴールデンタイムにCMをどんどん打っていますが、テレビの視聴率が下がってきているというのに果たしてそのまま続けていっていいものか? という疑問が生じてきますね。
T:そもそも、最初に話しましたが、バクチ的に考えれば「中央より地方の方が当てやすい」わけで。なぜ当たりにくい方に客が集まるのか? もし地方が「こっちの方が当たりますよ〜、なぜなら…」と理詰めの広告を打ったら…中央との全面戦争になりますかね(笑)? あ、今の広告規制では「当たる・当たらない」自体がダメか。
B:ただ、「当てやすくなる」ためには時間がかかります。時間をかけてやらねばならないということは、すぐに結果を求めたがる若い連中には向かないということもいえるわけですが。
T:まぁ、バクチはなんでも学習は必要ですから。でも、おっしゃる通りTV自体が凋落している以上、ミーハー広告ではなく、「ちゃんと馬券を買う層」を確実にとらえる宣伝をする必要がある。それは他競技も同じですが。このままだと「奢れるJRAは久しからず」のニオイも…(笑)。
B:奢れるJRAは久しからず。大いにありえます。
「パチンコ・スロットの若者を競馬場へ!」
T:あと、そろそろBODさんお得意の「競争形態について」にいきましょうか? 現在の競馬におけるレース的問題点はありますか?
B:レース的な問題点といえばまず、G1レースが多すぎますね。中央も地方も。
T:中央は「春秋は毎週G1だ!」という形にムリヤリして、客も今のところそれに適応していますよね。未来はかなり危なっかしい感じもしますが。地方に至っては、個人的にはいまだに一年間のGレースの体系がよくわかりません。 B:一番問題なのはダートのG1レース体系ですね。JBCとジャパンカップダートが同じ月に開催されたり、川崎記念とフェブラリーSも似たような開催時期に行われますね。これらを整理できないか、ということですね。
T:それは中央との交流戦が絡むということで日程的制約が生じてるんでしょうかね? 他競技と比べるのがいいのかどうかはわかりませんが、例えば現在では競艇ですらちょっとSGが多いな、と感じるぐらいですから。競馬のG1はあきらかに多いですね。私感では各競技、最高グレードのレースは春夏秋冬各1回と年末に1回、計5つぐらいが理想。
B:そうですね。結局中央でも馬券が売れるレースといえば決まって今でも3歳牡馬クラシックと天皇賞、有馬記念ぐらい。中にはNHKマイルカップやヴィクトリアマイルのように、G1レース自体が「トライアルレース化」しているものがあります。G1がトライアルレースというのは何か違和感を感じますね。
T:まぁ、どの競技でも昔のようにヒラ開催、ヒラレースの売上が安定していれば無闇にGレースの開催に及ぶこともないのでしょうが。ムリヤリ盛り上げて買わせるためのグレードレースですからね。私など、もう二十年も公営競技をやってると、ヒラレースでもSG優勝戦でも正直、買う時の感情は全く同じです。
B:今、中央と地方を合わせて35ものG1レースがありますが、10減らせたらいいと思いますね。
T:このままG1過多が続くとどのみち売上を食い合って…という流れは目に見えてますね。なにせ客単価が上がる気配が一向にない現在ですから。ところで地方競馬の売上減、に話を戻しますが、この右肩下がりのペースはパチンコのCR機の普及とかなりリンクしているらしいです。「地方競馬=地場レジャー」と考えれば、地元でのギャンブル(遊び)のキャパをそっくりパチンコに取られてしまった、という側面も強そうです。
B:パチンコは特に若い連中にとってみれば「勝てるチャンス」が大きい代物ですからねぇ。地方競馬では歯が立たないでしょう。
T:大井の近所のパチ屋に行くと、よく騎手の姿を見かけるそうです。「オマエらがやっててどーすんだ!」(笑)。
B:ま、私はパチもスロもやらないから分かりませんが、はっきりいえば、単純にギャンブル面だけ押し出したのでは、とりわけ若い連中は競馬には向かわないでしょうね。
T:競馬は、まがりなりにも今やレースギャンブル中最メジャー競技ですから、公営競技がパチンコから客を奪うには、とりあえず競馬に来させるのがテーマ。パチより競馬の方が良いよ、と説得力ある宣伝を考えたいところですが、何かないですかね? 先日の『週間レース』誌コラムでは「パチンコは引きこもり・ニート的だ!」と書きましたが(笑)。
B:となると、やはり、「金銭感覚」を身につけさせるべく、とりわけ若い連中を諭すことにあるでしょうね。
T:おお、そういえば以前に株の話かなにかの時におっしゃってましたね。「ギャンブル勘を養うには公営競技が一番!」みたいな。あと、デートで行くならパチ屋より競馬場の方が雰囲気的にも全然良い。
B:その通りですね。パチやスロだと、「楽しむ」だけでもン万単位使わねばならないそうですが、地方競馬だと1日3000円とか5000円レベルで十分楽しめます。つまり、手持ちのカネがないときほど地方競馬は有効。そもそも私は笠松では1日当たり、それくらいの金額しか馬券は買わないですからねぇ。もっとも、交通費がかかる上に、専門紙と予想屋2つを使わねばならないことから、「必要経費」だけでかなりかかるということもあるんですが・・・
T:そろそろまとめますが、今回「普及策」として出たのは… ●地方競馬の「買いやすさ・当たりやすさ」をアピール
●一般客が気軽に馬主になれるシステムの構築
●上記を含めた「競馬の原点」的な各種企画
●JRAはもう少し「日本競馬」を考えよ
●「ギャンブル入門編」として若者を啓蒙
…といった感じでいかがでしょう?
B:それで十分。誰もが納得しますよ(笑)。
T:では今回はこのへんで。次回は競艇…と思ったのですが、先に風雲急を告げるオートレース編にしたいと思っております。
B:オートレースか。もう終わりでしょう?(大笑)。
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【会談後雑感】
●とにかくハンパではない地方競馬の売上急減ぶり。「賛成派」の私としても、これはちょっと救えないかな? という場もいくつか…が正直なところ。厩舎関係など、抱えるバックボーンが大きいので経費削減にも限界があり、中津から始まり北関東全廃までが廃止第一期とすれば、同規模の「廃止第二期」の到来は近いかな、という感じ。報道も色々な立場・側面からされていて、上部団体からもマスコミからも決定的な方策は出てこない。個人的にはJRAが重過ぎる腰を上げるしかない! と思います。(TOM)
●すでに農林水産省では、近い将来に来るべき「共同法人化」(現在のNARを事実上解体して)を睨んで、地方競馬場の整理を検討しているそうです。しかしJRAとて、ピーク時よりも1兆円も売り上げがダウンしており、現在も売り上げ向上打開策さえ見出せない状態。今年もやはり途中経過では売り上げが前年比割れを引き起こしています。にもかかわらず、PR方法などがピーク時とまるで変わっていない(つまり、超有名芸能人を起用するという、やたらカネがかかるやり方)ところが気になる次第であるが。(Bank of Dream)
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次回予告:「公営競技普及策《オートレース編》」 8月下旬更新予定。お楽しみに!
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